遺品整理の見積もりを安くするために、事前にできる3つの準備
遺品整理 2026/11/1 公開
この記事の結論
- 見積もりの前にできる準備は、残す物と手放す物の仕分け、自分で出せる物の切り分け、見積もりを頼む条件の整理の3つです。
- 準備の目的は、無理に金額を下げることではなく、2〜3社を同じ条件で比べられる状態にすることです。残す物は貼り紙と写真で、業者に書面で伝えます。
- 見積書は持ち帰って家族と相談し、その場で契約しません。困ったときは、消費者ホットライン188で最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。
遺品整理を業者に頼むと決めたあと、多くの方が気にされるのは「見積もりの金額をできるだけ抑えられないか」という点です。実家の片付けは、交通費や休みの調整、葬儀や手続きの費用が重なる時期に行うことが多く、出費は少しでも減らしたいと考えるのが自然です。一方で、金額だけを見て業者を選ぶと、あとから追加の請求が出たり、残すつもりだった物が処分されたりする行き違いが起きることも、公的機関の資料から分かっています。本記事では、見積もりを取る前に自分たちでできる準備を、3つに絞って説明します。1つ目は残す物と手放す物を分けること、2つ目は自分で出せる物を先に切り分けること、3つ目は見積もりを取る条件をそろえることです。値切るための交渉術ではなく、無理のない範囲で、納得して金額を比べるための準備として読んでいただければ十分です。
業者に頼むことは決めましたが、先に自分たちで何かしたほうがよいのでしょうか。
全部を片付ける必要はありません。見積もりの前にできる準備は、大きく3つあります。どれも数日あれば取りかかれる内容ですので、できる範囲から進めてみてください。

見積もりの前に、準備が役に立つ理由
図は、この記事で順に説明する3つの準備です。先に全体を見てから、各項目を読み進めてください。
見積もりは、作業の範囲をもとに出される
業者の見積もりは、どの部屋のどこまでを片付けるのか、運び出す物がどのくらいあるのか、といった作業の範囲をもとに出されるのが一般的です。範囲があいまいなまま依頼すると、業者は現地で見た範囲で金額を考えるしかなく、あとから「ここも含めてほしい」と伝えると、金額が変わることがあります。逆に、依頼する側が範囲を整理して伝えておけば、金額の根拠が見えやすくなり、業者どうしを同じ条件で比べやすくなります。
準備の目的は、金額を無理に下げることではありません。同じ条件で比べられる状態をつくることが、結果として納得できる金額につながります。
公的機関が勧める確認の中身
国民生活センターは、2018年7月19日の公表資料で、遺品整理サービスを頼むときのアドバイスを5つ挙げています。複数の事業者から見積もりを取るなど事業者の選定を慎重に行うこと、作業内容や費用を明確に出してもらい見積書の内容を十分に確認すること、料金やキャンセル料、具体的な作業内容を事前に確認すること、残しておく遺品と処分する遺品を明確に分けておくこと、事業者とトラブルになったときは消費生活センターに相談することです。
この中の「複数社から見積もりを取る」「残す遺品と処分する遺品を分ける」の2つは、依頼する側の準備そのものです。本記事の3つの準備は、この助言を、実際の手順に落とし込んだものと考えてください。

準備をしなくても、頼むことはできる
ここで、ひとつ断っておきます。準備ができていなくても、遺品整理を業者に頼むことはできます。仕事や育児、遠方からの通いで、自分たちでは手が回らないからこそ業者に頼む、という方も多くいらっしゃいます。準備は、すべてを済ませてから頼むためのものではありません。時間が取れる範囲で、できるところから進めれば十分です。
準備1:残す物と手放す物を分ける
見積もりの前に、なぜ仕分けが必要なのですか。
見積もりの前の準備として、最初に取りかかりたいのは仕分けです。何を残すのかが決まっていないと、業者は「全部を処分する」前提でも「一部を残す」前提でも金額を出せますが、どちらなのかで作業の内容が変わります。さらに、仕分けをしないまま作業に入ると、残すつもりだった物が処分されるおそれがあります。

国民生活センターに寄せられた事例
国民生活センターの「見守り新鮮情報」第525号(2025年10月30日公表)には、遺品整理に関する2つの事例が載っています。1つ目は、ネットで探した事業者に電話で依頼したところ、事前に約20万円と聞いていたのに、作業後に30万円を請求されたという60歳代の方の事例です。見積書は受け取っていなかったと説明されています。2つ目は、残すよう約束していたアルバムや電話機まで処分されたという、やはり60歳代の方の事例です。事業者に苦情を伝えたときには、すでに処理場へ運ばれていて、取り戻せなかったとされています。
どちらも、依頼する側が範囲と残す物を書面で決めていれば、避けやすかった行き違いです。処分された物は戻ってきません。 仕分けは、金額のためだけでなく、大切な物を守るための準備でもあります。
仕分けは3つの箱で考える
仕分けの考え方は、複雑にしなくて構いません。「残す物」「手放す物」「迷う物」の3つに分けます。
図は、3つの箱の考え方です。迷う物を無理に決めようとすると、作業が止まります。迷う物は別の箱に入れ、見直す日を決めておくと、判断を先送りにしつつ、残す物が混ざる心配も減らせます。
先に探しておきたい物
どの物が大切かは家庭によって違いますが、あとから必要になりやすい物があります。通帳、印鑑、保険証券、権利書や契約書などの書類、現金、貴金属、写真、手紙です。これらは、作業の前に家族で探して、別の箱や鞄にまとめておきます。業者に「貴重品が出てきたら渡してください」と頼むことはできますが、そもそも家族が先に確認しておくほうが確実です。

写真や手紙の判断に迷うときは、遺品整理で写真や手紙が出てきたら?残す・手放すの判断基準で、考え方を整理しています。相続の手続きが関わる物は、手放す前に遺品整理と相続の順番も確認しておくと安心です。
家族で、残す物の希望をそろえる
きょうだいや親族がいる場合は、仕分けの前に、残したい物の希望を聞いておきます。作業が終わってから「あれは残してほしかった」と言われても、取り戻せないからです。全員が集まれなくても、電話やメッセージで「これは処分してよいか」を確認し、返事を残しておくと、あとで行き違いになりにくくなります。
仕分けの記録を残す
残す物の箱や部屋には、貼り紙で「残す」と書き、写真を撮っておきます。業者に見せるときにも、写真があれば、言葉だけで説明するよりも伝わりやすくなります。この記録は、見積書に「残す物には手を付けない」と書き添えてもらうときにも役立ちます。

準備2:自分で出せる物を先に出す
業者に頼む前に、自分で処分してよい物はありますか。
仕分けで「手放す物」が決まったら、その中から、業者に頼まなくても処分できる物を先に出します。見積もりの対象になる物の量が減れば、見積もりの前提となる作業の範囲も小さくなります。ただし、無理をして体を壊しては本末転倒です。重い物や大きな家具は、業者に任せてかまいません。
図は、自分で手配しやすい3つの物です。順に説明します。
自治体の収集に出せる物
家庭から出るごみは、市区町村が処理する責任を負っています。国民生活センターも、不用品を処分するときは、まず市区町村の案内する方法を確認するよう勧めています。
例として、横浜市の粗大ごみを見てみます。横浜市では、一番長い辺が金属製品で30センチ以上、それ以外の木製品やプラスチック製品で50センチ以上の物が粗大ごみとされています。収集を頼む場合も、自分で持ち込む場合も、事前に粗大ごみ受付センターへの申し込みが必要で、申し込みはインターネット、チャット、LINE、電話でできます。手数料は品目ごとに決まっていて、申し込みのときに確定します。支払ったうえで収集シールを貼り、決めた日時と場所に出します。
自治体によって、対象になる大きさや手数料、申し込みの方法は異なります。お住まいの市区町村のホームページで、「粗大ごみ」「品目」「手数料」を確かめてください。事前に金額が分かる点は、見積もりの比較でも判断の材料になります。

家電4品目は、決まった出し方がある
エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は、家電リサイクル法の対象で、普通の粗大ごみとしては出せません。環境省によると、排出する人は、収集運搬料金とリサイクル料金を支払うことが求められ、小売業者には使い終わった対象品目を引き取る義務があります。国民生活センターの2022年11月2日の資料では、買い替えのときは新しい製品を買った店に、処分だけのときは以前に買った店に引き取りを頼むよう案内されています。
リサイクル料金はメーカーごとに、収集運搬料金は小売業者ごとに異なります。料金は変わることがあるため、この記事では金額を載せません。購入した店やメーカーの案内で、最新の金額を確かめてください。購入した店が分からない場合や、店がすでにない場合は、市区町村の窓口で出し方を教えてもらえます。
4品目を、許可のない回収業者に渡さないでください。 許可のない業者への依頼は、不法投棄につながるおそれがあると、国民生活センターが注意しています。許可の確かめ方は、遺品整理業者とのトラブル事例に学ぶ、契約前のチェックリストで説明しています。
買い取りに出せる物を分ける
家具や家電、着物、時計、貴金属、本、趣味の品などは、買い取りの対象になることがあります。値段が付くかどうかは物の状態や需要によって変わるため、「売れる」と言い切ることはできません。それでも、手放す前に買い取りに出せる物を分けておくと、処分する物が減ります。
遺品を買い取る事業者には、古物商の許可が必要です。国民生活センターは、「古物商許可証」や「行商従業者証」の提示を求めるよう案内しています。自宅に来た買い取り業者が許可を示さない場合や、その場で契約を急がせる場合は、見送ってかまいません。

無理に自分でやらない物
自分で出す準備は、ここまでで十分です。大きなタンスや仏壇、重い家具、庭の石や物置の中身など、運び出すときにけがをするおそれがある物は、業者に任せてください。階段しかない2階の奥から家具を降ろす作業は、体力のある方でも負担が大きいものです。自分で出す物は、安全に運べる範囲に限ります。
仏壇や位牌など、気持ちの面で扱いに迷う物は、仏壇や位牌の処分の考え方も参考にしてください。
準備3:見積もりを取る条件をそろえる
複数社の見積もりを、同じ条件で比べるにはどうすればよいですか。
仕分けと自分で出す物の準備ができたら、見積もりを取る段階に進みます。ここで大切なのは、2〜3社に、同じ条件で依頼することです。国民生活センターも、料金や作業内容は事業者によって大きく異なるため、複数の事業者から見積もりを取り、契約内容を比べるよう勧めています。

業者に伝える情報を、先にメモしておく
見積もりを頼むときに、毎回同じ説明ができるよう、伝える内容をメモにまとめておきます。条件が社ごとに違うと、金額の差が、業者の違いなのか、条件の違いなのかが分からなくなります。
図は、伝えておきたい5つの情報です。順に説明します。
- 片付ける範囲:どの部屋、どこまでか。物置や庭、車庫を含むかどうか。
- 残す物:準備1で分けた物。貼り紙の場所と、写真があれば伝える。
- 建物の階数とエレベーターの有無:運び出しの手間に関わる。
- 車を停められる場所:玄関前に停められるか、離れた場所になるか。
- 希望の時期:退去や売却、相続の手続きなどの期限があるか。
業者の見積もりは、搬出の経路や人数の見込みにも左右されます。建物の条件を先に伝えておくと、現地での確認がスムーズになり、あとから条件が変わって金額が動く場面も減らせます。
見積もりは、現地を見てもらったうえで出してもらう
写真や電話だけで出る見積もりは、実際の物の量と違うことがあります。可能であれば、現地で物の量や運び出しの経路を見てもらい、そのうえで書面の見積書を出してもらいます。前述の事例1では、見積書を受け取っていなかったことが、あとで金額を争う難しさにつながっています。口頭で聞いた金額は、書面にしてもらいましょう。

同じ項目で並べて比べる
見積書が届いたら、金額の合計だけでなく、内訳を並べて見ます。見る項目は、作業の範囲、人数と作業日、運搬の費用、処分の費用、追加料金が出る条件、キャンセル料です。「作業一式」とだけ書かれていて内訳が分からない場合は、内訳を出してほしいと頼みます。
金額が安い見積もりには、理由があるはずです。範囲が狭いのか、処分費が含まれていないのか、追加料金で調整する前提なのか。理由を聞いても答えが曖昧なときは、候補から外して構いません。見積もりの比べ方は、遺品整理業者の選び方でも整理しています。
その場で契約しない
見積もりに来た業者から「今日決めれば安くなる」と言われることがあります。国民生活センターの2018年の資料には、せかされて契約したが作業が始まらず、解約を申し出ると高額なキャンセル料を請求された、という事例があります。見積書は持ち帰って、家族と相談してから決める。 それだけで、この型の行き違いは避けやすくなります。
見積もりのために呼んだ業者とその場で契約した場合には、訪問販売のクーリング・オフが使える可能性があると、国民生活センターは説明しています。迷ったときは、消費者ホットライン188に電話すると、最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。
金額の差を読み解く
2〜3社の見積もりが出そろったら、金額の差の理由を考えます。
- 範囲の違い:片付ける部屋や、物置、庭などを含むかどうか。
- 処分費の扱い:処分費が含まれているか、別の請求か。
- 追加料金の条件:どんなときに、いくら増えるか。
- 作業の人数と日数:1日で終わるのか、複数日か。
- 買い取りの有無:買い取り額が差し引かれているか。
同じ条件で依頼していれば、これらの違いが、そのまま業者ごとの考え方の違いとして見えてきます。いちばん安い見積もりを選ぶのではなく、内訳が明確で、聞いたことに書面で答えてくれる業者を選ぶことが、後悔の少ない決め方です。

準備を進めるときの注意点
準備は大切ですが、焦って進める必要はありません。次の点だけ、気に留めてください。
期限がある場合は、先に業者に相談する
賃貸住宅の退去日や、売却の予定など、期限が決まっている場合は、準備に使える時間が限られます。その場合は、仕分けを全部終えてから業者に連絡するのではなく、先に1〜2社に現地を見てもらい、必要な作業と日数を聞いておくと計画を立てやすくなります。仕分けは、見積もりと並行して進められます。

気持ちが追いつかないときは、休む
遺品の整理は、気持ちの面でも負担の大きい作業です。仕分けの途中で手が止まるのは、自然なことです。無理に進めず、休んでかまいません。進め方に迷うときは、遺品整理は一人でもできる?進め方の手順と無理をしないコツも参考になります。
作業の当日は、立ち会う
見積もりと契約が済んだあとも、当日の立ち会いは大切です。国民生活センターも、残す遺品と処分する遺品を明確に分け、作業にはできるだけ立ち会うよう勧めています。立ち会えない場合は、家族や信頼できる人に代わりを頼むか、作業前後の写真を撮ってもらう方法があります。
図は、あとで確かめるために残しておく3つの記録です。
よくある質問
準備をすれば、見積もりは安くなるのでしょうか。
安くなると言い切ることはできません。準備の目的は、同じ条件で比べられる状態をつくり、納得できる金額を選ぶことです。物の量が減れば作業の範囲が小さくなる場合はありますが、金額は業者や地域、建物の条件で変わります。
仕分けが終わっていなくても、見積もりを頼めますか。
頼めます。現地を見てもらったうえで、残す物の考え方を伝えれば、見積もりは出してもらえます。ただし、作業の日までに、残す物の仕分けと貼り紙は済ませておきましょう。
見積もりだけ頼んで、断ってもよいのですか。
断っても構いません。見積もりを取ることと、契約することは別です。断るときは、電話やメッセージで「他社と比べて決めます」と短く伝えれば十分です。
まとめ
遺品整理の見積もりを取る前の準備は、3つです。
- 残す物と手放す物を分け、迷う物は別の箱に入れて期限を決める。
- 自治体の粗大ごみ、家電4品目、買い取りなど、自分で出せる物を安全な範囲で先に出す。
- 伝える情報をメモにまとめ、2〜3社に同じ条件で、現地を見てもらったうえで見積書を出してもらう。
準備の目的は、金額を下げることだけではありません。大切な物を守り、納得して選ぶための土台をつくることです。時間が足りないときは、できるところから進めれば十分です。困ったときは、消費者ホットライン188で、最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。
この記事の出典
- 独立行政法人国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル」(2018年7月19日公表)https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180719_1.html
- 独立行政法人国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル-市区町村から一般廃棄物処理業の許可を受けず、違法に回収を行う事業者に注意!-」(2022年11月2日公表)https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221102_1.html
- 独立行政法人国民生活センター「見守り新鮮情報 第525号 遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」(2025年10月30日公表)https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen525.html
- 環境省「家電リサイクル法の概要」https://www.env.go.jp/recycle/kaden/gaiyo.html
- 横浜市「粗大ごみの出し方の流れ」https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/gomi-recycle/gomi/shushu/sodaigomi/dashikata/hajimeni.html

