遺品整理と相続手続きはどちらが先?|進める順番と期限の目安

TITLE: 遺品整理と相続手続きはどちらが先?|進める順番と期限の目安 DESC: 遺品整理と相続手続きは、どちらを先に進めればよいのか。片付けを先に進めたときに起きること、死亡届の7日から相続登記の3年までの期限、状況別の進め方を整理しました。民法・裁判所・法務省・国税庁の情報をもとにまとめています。 HERO: /column/ihin-seiri-souzoku-junban.webp =====BODY===== 「片付けを始めていいのか分からない」「手続きが先だと言われた」「何から手をつければいいのか」——親が亡くなったあと、そう感じている方は少なくありません。順番が分からないのは、段取りが悪いからでも、調べ方が足りないからでもありません。遺品整理と相続手続きは別々の仕組みで動いていて、期限のあるものと無いものが混ざっているためです。本記事では、片付けを先に進めたときに起きること、日数で並べた手続きの期限、状況別の進め方をお伝えします。
親が亡くなりました。実家の片付けと相続の手続きは、どちらを先にすればよいですか。
先に手をつけたいのは「探すこと」です。物を手放すのは、そのあとでも間に合います。理由と、期限のある手続きの並びを順にお伝えします。
遺品整理と相続手続きは別の道
✓ 片付けは「物」、手続きは「権利と義務」
遺品整理は、家の中にある物をどうするかを決める作業です。一方の相続手続きは、亡くなった方が持っていた財産と債務を、誰がどう引き継ぐかを決める手続きです。同じ家の中で同時に進みますが、扱っているものが違います。
民法は、相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています(民法第896条)。預金や不動産だけでなく、借入金や未払いの費用も含まれます。家の中にある物も、この財産の一部です。
つまり家財は、片付けの対象であると同時に、相続の対象でもあります。この二重の性格が、順番を迷わせるいちばんの原因になっています。
✓ 期限が決まっているのは、手続きのほう
遺品整理そのものに、法律で決まった期限はありません。四十九日までに終えなければならないという決まりもありません。急ぐ理由があるとすれば、賃貸の明け渡しや家の売却といった、家の側の事情です。
これに対して相続手続きには、日数の決まったものがいくつもあります。相続放棄は3か月、準確定申告は4か月、相続税の申告は10か月です。相続登記も、2024年4月から3年以内の申請が義務になりました。
期限のあるほうを先に確かめ、期限のないほうを後ろに置く。順番を決めるときは、この単純な考え方が土台になります。
片付けを先に進めると、戻せなくなることがある
✓ 「処分」は単純承認とみなされる場合がある
民法は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています(民法第921条第1号)。単純承認とは、権利も義務もすべて引き継ぐという選び方のことです。
裁判所の案内でも、相続が開始したときに相続人が選べるのは、単純承認・相続放棄・限定承認の三つだと説明されています。このうち相続放棄と限定承認をするには、家庭裁判所への申述が要ります。
条文には「ただし、保存行為……は、この限りでない」という但し書きもあります。どこまでが処分にあたるかは事情によって判断が分かれる部分です。借入金の心当たりがある場合は、物を動かす前に弁護士や司法書士へ相談してください。
いったん手を止めたほうがよい場合 督促状や借用書が出てきた。亡くなった方が事業をしていた。金融機関からの郵便が続いている。こうした事情があるときは、片付けの前に専門家へつなぐ場面です。
✓ 遺言書が出てきたら、その場では開けない

引き出しや仏壇から、封をした遺言書が出てくることがあります。民法は、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封することができないと定めています(民法第1004条第3項)。
保管していた人や見つけた人は、相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所へ提出して検認を請求することとされています(同条第1項)。検認を経ずに遺言を執行した者、家庭裁判所以外で開封した者は、5万円以下の過料に処すると定められています(民法第1005条)。
例外もあります。公正証書による遺言には、検認の規定が適用されません(民法第1004条第2項)。法務局の自筆証書遺言書保管制度を使っていた場合も、法務省は相続開始後に家庭裁判所における検認が不要だと案内しています。
✓ 判断がつかない物は、動かさずに写真を撮る
その場で決められない物が出てきたときは、写真を撮って元の場所に戻しておきます。あとから専門家に見てもらうとき、どこに何があったかが分かる状態のほうが、話が早く進みます。
捨ててしまったものは戻せませんが、置いておいたものは、いつでも捨てられます。迷ったときは、判断を先に延ばすほうが損をしにくい場面です。
「探す」と「手放す」を分ける
✓ 最初にやるのは、捨てることではなく探すこと
順番に迷ったときは、作業を「探す」と「手放す」の二つに分けます。探す対象は書類と貴重品、手放す対象は家具と日用品です。前者は相続手続きの材料になり、後者が片付けの本体になります。
探すほうは、早く終えるほど後の判断が楽になります。手放すほうは、期限がなければ急ぐ必要がありません。この二つを同じ日にまとめて進めようとすると、勢いで捨ててしまう物が出ます。
✓ 先に探しておきたい書類
- 通帳・キャッシュカード・金融機関からの郵便物
- 保険証券と、保険会社からの案内
- 不動産の権利証・納税通知書
- 年金手帳・年金の振込通知書
- 借入金の契約書・督促状・クレジットカードの明細
- 遺言書・エンディングノート
固定資産税の納税通知書は、どこにどの不動産を持っていたかが分かる書類です。金融機関からの郵便物は、把握していなかった口座を知る手がかりになります。どちらも、束ねて紙ごみにしてしまいがちな物です。
✓ 一か所に集めて、動かす前に写真を撮る
見つけた書類は、箱を一つ決めてそこへ集めます。中身を読んで判断するのは、後で構いません。集めることと読むことを同時に進めようとすると、家全体の作業が止まります。
家具や押し入れの中は、動かす前に写真を撮っておきます。「あの引き出しに何か入っていなかったか」という話になったとき、写真があれば確かめられます。
写真の撮り方 引き出しは開けた状態で1枚、部屋全体で1枚。この2枚があると、あとから見返したときに、どこの何を写したものかが分かります。

遠方に住んでいて何度も通えない場合は、この探す作業だけを先に1日取る進め方もあります。運び出しは業者に任せられますが、探すことは家族にしかできません。
状況別|どちらを先にするかの目安
| 状況 | 先に確かめる | 片付けを始める時期 |
|---|---|---|
| 借入金の心当たり | 財産と債務 | 承認か放棄を決めてから |
| 賃貸で期日がある | 期日と作業量の見込み | 書類を探し終えたら |
| 持ち家で急がない | 相続人と期限の確認 | 相続人の合意のあと |
| 相続人が複数いる | 誰が相続人かの確認 | 形見分けの方針を決めてから |
どの状況にも共通すること 書類を探す作業だけは、どのケースでも先に済ませます。ここだけは順番が動きません。
✓ 賃貸で期日があるときは、日数から逆算する

借りていた部屋の賃借権も、相続の対象になります。解約の手続きが済むまで家賃は発生し続けるため、賃貸のケースは急ぐ理由がはっきりしています。
ただし、急ぐことと、確認を省くことは別の話です。書類を探す作業だけは先に済ませ、そのうえで運び出しに入ります。日程が厳しいときほど相見積もりを取る時間がなくなり、条件を比べられなくなります。
見積もりを取ることと、片付けを始めることは別の行為です。金額と日程の見当をつけるだけであれば、相続の話し合いと並行して進められます。業者を選ぶときの確認事項は、遺品整理業者の選び方の記事にまとめています。
✓ 急ぐ事情がないときは、順番を守る
持ち家で誰も住んでいない状態であれば、片付けを数か月遅らせても費用は変わりません。かかるのは固定資産税と管理の手間です。慌てて進めて判断を誤るほうが、結果として痛手になります。
「早く片付けないと」という気持ちは、期限があるという事実とは別のものです。まず期限を書き出してみると、思っていたより余裕があると分かることもあります。
兄弟から「早く片付けよう」と言われています。断ってもよいですか。
期限を一緒に確かめてみましょう。賃貸の明け渡しがなければ、片付けそのものに法律上の期限はありません。急ぐ理由が家の事情なのか、気持ちの問題なのかを分けると、話が進みやすくなります。
期限のある手続きを、日数で並べる
✓ 7日・3か月・4か月・10か月
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出することとされています。届出先は、死亡地・本籍地または届出人の所在地の市区町村役場です。多くの場合、葬儀社の案内にしたがって済んでいます。
相続放棄と限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法第915条第1項)。申述先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所になります。
亡くなった方に確定申告が必要だった場合、準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内とされています。
相続税がかかるかどうかは、財産の内容によって変わります。対象になるかどうかの判断が必要な場合は、税理士に確認してください。
✓ 相続登記は3年以内(2024年4月から義務)
不動産を相続した場合、相続登記の申請が義務になりました。法務省は、相続により不動産の所有権を取得した相続人は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由がないのに怠ったときは10万円以下の過料の適用対象になると案内しています。
施行日は令和6年(2024年)4月1日です。施行日より前に相続した不動産で登記をしていない場合も対象になり、令和9年(2027年)3月31日までに申請することとされています。
実家を片付けたあと空き家として残す場合でも、登記の期限は動きません。片付けの日程とは別に、手続きの予定として書き出しておきます。
書き出す順番 亡くなった日を紙の左端に書き、そこから3か月・4か月・10か月の日付を実際に記入します。頭の中で数えるより、日付にしたほうが、どれが近いかがひと目で分かります。
✓ 3か月では決められないとき
財産の状況を調べても、相続を承認するか放棄するかを判断する材料が集まらないことがあります。この場合、家庭裁判所への申立てにより、承認または放棄の期間を伸ばせる仕組みがあります。
期限を過ぎてからでは、選べる手が減ります。判断がつかない状態が続いているのであれば、3か月が来る前に家庭裁判所か専門家へ相談してください。
相続人が複数いるときの進め方
✓ 誰が相続人かを、戸籍で確かめる
相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどり、相続人が誰かを確定させます。前の婚姻の子など、想定していなかった相続人が分かることもあります。
片付けは、この確認と並行して進められます。ただし、値段のつく物を手放す判断は、相続人がそろってからのほうが安全です。あとから「あれはどうしたのか」という話になりにくくなります。
✓ 形見分けの前に、方針をそろえる

貴金属・時計・美術品・骨董品など、値段のつく物は、分け方でもめやすい部分です。作業を始める前に、こうした物をどう扱うかだけは決めておきます。
決め方は一つではありません。全員で確認してから分ける、いったん保管して後日決める、買い取り金額を出してもらってから分ける。どれを選ぶかを先に共有しておくと、当日の判断が早くなります。
買い取りを頼む場合は、何をいくらで引き取るのか、その分を作業費から差し引くのかも確認します。金額の出し方が分かっていれば、あとから説明しやすくなります。
✓ 遠方の相続人がいるとき
全員が現地に集まれないことは珍しくありません。作業前と作業後の写真を共有する、値段のつきそうな物は個別に写真を送る、といった段取りを先に決めておきます。
業者に頼む場合は、立ち会えない人がいることを事前に伝えます。貴重品が見つかったときの連絡先を一本化しておくと、当日の連絡が混乱しません。
かたづけ比較の考え方
かたづけ比較は、遺品整理・不用品回収の事業者をくらべて選べるサービスです。1社をおすすめするのではなく、複数の業者の見積もりを並べて比べられる状態をつくることを大切にしています。
順番の話をここまで書いてきたのは、片付けを後回しにしてほしいからではありません。探すべきものを探し終えてから運び出すほうが、作業が一度で済み、費用も読みやすくなるためです。二度手間になったときにかかる費用は、慎重に進めた分の時間より大きくなりがちです。
費用の見当をつけておきたい場合は、間取り別の目安を公開しています。本サイトが提携する片付け業者から提供を受けた相場で、1R・1Kで3万円から8万円、2LDKで12万円から30万円といった幅があります(2026年7月時点・大阪拠点)。同じ間取りでも物の量で3倍近く開くため、実際の金額は現地を見てもらってから決まります。くわしくは間取り別の料金の目安をご覧ください。
相続の話がまとまっていない段階でも、見積もりを取ること自体はできます。金額と日程が分かっていれば、いつから動けるかの計画が立てられます。
よくある質問
四十九日が済むまで、片付けを始めてはいけませんか。
そうした決まりはありません。四十九日は法要の区切りであって、遺品整理の期限ではありません。親族が集まる機会に合わせて進め方を相談する家庭が多いため、結果的にその頃から動き始めるケースが目立ちます。

相続放棄を考えています。実家の物には触らないほうがよいですか。
民法は、相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めています。どこまでが処分にあたるかは事情によって判断が分かれるため、放棄を検討している段階では、物を動かす前に弁護士や司法書士へ相談してください。
相続の話がまとまっていませんが、見積もりだけ先に取れますか。
取れます。見積もりを取ることと、作業を依頼することは別の手続きです。金額と日程の見当がついていれば、相続人どうしの話し合いもしやすくなります。作業日をいつ決めればよいかも、あわせて聞いておくと計画が立てられます。
実家を空き家のまま置いておくと、何か手続きが要りますか。
不動産を相続した場合は、相続登記の申請が3年以内に義務付けられています。片付けが済んでいるかどうかとは関係なく期限が進むため、登記の予定は別に立てておきます。
この記事の出典
- 民法第896条・第915条・第921条・第1004条・第1005条(e-Gov法令検索・2026年8月27日確認)
- 裁判所「相続の放棄の申述」(裁判所ウェブサイト・2026年8月27日確認)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」(法務省ウェブサイト・2026年8月27日確認)
- 法務省「死亡届」(法務省ウェブサイト・2026年8月27日確認)
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」(法務省ウェブサイト・2026年8月27日確認)
- 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」令和7年4月1日現在法令等(国税庁ウェブサイト・2026年8月27日確認)
- 国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」令和7年4月1日現在法令等(国税庁ウェブサイト・2026年8月27日確認)
- 間取り別の費用の目安:本サイトが提携する片付け業者から提供を受けた相場(2026年7月時点・大阪拠点)。本サイトの料金ページでも公開しています
手続きの運用は市区町村や家庭裁判所によって異なる場合があります。個別の判断が必要な場合は、弁護士・司法書士・税理士など、その分野の専門家にご相談ください。