高齢の親の家が片付かないときごみ屋敷化を防ぐためにできること
生前整理 2026/10/16 公開
この記事の結論
- 親の家が片付かなくなる背景には、体力の低下、ごみ出しの難しさ、気持ちの落ち込みなど、いくつもの事情が重なっています。まず責めずに様子を聞き、困りごとを知ることから始めます。
- 家族だけで抱えず、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談できます。ごみ出しの支援制度を設けている自治体もあります。
- 一度に片付けようとせず、通り道と玄関など小さな場所から始め、続く仕組みを作ります。本人の気持ちを置き去りにしないことが、再び散らかるのを防ぐ近道です。
久しぶりに実家へ帰ったら、玄関に紙袋が積まれ、廊下の端に段ボール箱が並び、台所のごみ袋が出し忘れのまま残っていた。そんな様子に、驚いた方もいるでしょう。「こんなに散らかる人ではなかったのに」と思うほど、気持ちは重くなります。けれども、家が片付かなくなるのは、親がだらしなくなったからとは限りません。体力が落ちて重い物を運べない、ごみ出しの日に間に合わない、気持ちが沈んで手が動かない、といった事情が重なっていることが多いからです。本記事では、高齢の親の家が片付かなくなったとき、ごみ屋敷と呼ばれる状態に進まないように、家族ができることを順に整理します。結論を先に言えば、大切なのは一度にきれいにすることではなく、責めずに困りごとを聞き、相談先を使い、小さな場所から続く形を作ることです。
親の家が散らかってきましたが、勝手に片付けてしまってよいのでしょうか。
本人の了解なしに片付けるのは勧められません。大切な物が混ざっているかもしれませんし、気持ちを傷つけると、かえって話を聞いてもらえなくなります。まず困りごとを聞き、一緒に進める形を探します。

家が片付かなくなるのは、だらしなさだけが理由ではない
親の家が散らかるのは、性格が変わったからでしょうか。
図の3つは、家族が気づきやすいサインの例です。サインが一つ見えただけで、すぐに問題だと決めつける必要はありません。ただ、いつもと違う点に気づいたら、声をかけるきっかけになります。
背景には、いくつもの事情がある
環境省は、令和6年度に「ごみ屋敷」に関する調査を行い、令和7年3月に報告書を公表しています。この調査で、自治体の回答の中には、原因となる人が身体や精神の障がい、社会的孤立、経済的困窮などの問題を抱えている場合が多い、という趣旨の記述がありました。また、ごみを除去するだけでは再発のおそれがあり、本人への福祉的な支援を優先するという考え方も示されています。
つまり、散らかった家の背景には、体の事情や暮らしの事情があることが多く、物を片付けるだけでは解決しにくいということです。家が片付かないのは、物の問題というより、暮らしの困りごとのあらわれである場合があります。
「ごみ屋敷」は特別な家だけの話ではない
同じ調査によると、令和2年度から令和6年度の5年度のあいだに、ごみ屋敷の事案を認知していると答えた市区町村は672で、有効回答1,741の約38.6%でした。認知件数の合計は6,054件、そのうち改善した件数は2,437件で、全体の40.3%と報告されています。
同じ報告書によると、事案を知るきっかけで最も多いのは市民からの通報で、次いで市町村による把握、原因者の親族などからの相談でした。家族からの相談も、自治体が状況を知る大切な入り口になっています。
数字から分かるのは、ごみ屋敷の問題が、全国の多くの自治体で扱われていることです。珍しい出来事ではなく、どの家でも起こりうる暮らしの変化の延長にあります。だからこそ、気になった段階で動くことに意味があります。
家の中で起きやすい困りごと

ごみ出しの日が合わなくなる、重い袋を集積場まで運べない、分別が分からなくなる。こうした小さな困りごとが続くと、家の中に物がたまっていきます。ごみ出しは毎週のことだからこそ、一度つまずくと取り戻しにくい作業です。
親の側から見れば、「手伝ってほしい」と言い出すこと自体が、気が引けるものです。長年自分で暮らしを切り盛りしてきた人ほど、人に頼ることを負担に感じます。家族は、そうした気持ちがあることを前提にして、手伝いを申し出る言葉を選びましょう。
責めずに話すための3つの心がけ
親に話を切り出すとき、何に気をつければよいですか。
親に話すときは、片付けの話をする前に、本人の暮らしぶりを聞く姿勢が大切です。「散らかっているね」と言われた親は、責められたと感じ、口を閉ざしてしまうことがあります。
「片付けて」より「困っていない?」
最初の一言は、片付けの指示ではなく、様子を聞く言葉にします。「ごみ出し、大変じゃない?」「重い物を運ぶとき、困っていない?」のように、具体的な動作を聞くと、親も答えやすくなります。話の切り出し方は、親に生前整理を勧めたいときの伝え方でも整理しています。
言い換えの例を、図にまとめました。同じ内容でも、言い方を変えるだけで、受け取られ方は変わります。
全部を決めようとしない
「今日中にきれいにしよう」と決めると、親は追い詰められた気持ちになります。まず、通り道だけ、玄関だけ、台所の一角だけ、のように範囲を小さくします。残す物か手放す物かの判断は、親が決めます。家族が代わりに決めると、あとで「勝手に捨てられた」という不信が残ります。

物を前にして、親の話に耳を傾けることも大切です。物には、持ち主の思い出や、その人なりの理由があります。「これは何に使っていたの?」と聞くと、手放してよいかどうかを親自身が考え始めることがあります。
安全に関わることだけは、具体的に伝える
転倒など、けがにつながることは、はっきり伝えて構いません。消費者庁は、高齢者の自宅での転倒事故について、電源コードが通り道にかからないよう電気製品の置き場所を工夫することを、予防策の一つに挙げています(2020年10月8日公表)。同じ資料では、65歳以上の自宅での転倒事故情報が5年間で275件あったと報告されています。
「片付けなさい」ではなく、「この通り道にコードがかかっているとつまずきそうで心配」と、具体的な一点に絞って話すと、親も受け取りやすくなります。
一人で抱えず、相談先を使う
家族だけでは難しいとき、どこに相談すればよいですか。
家族だけで抱えると、話し合いが感情的になりやすく、進みにくくなります。相談先を使うことは、親を人に任せることではなく、家族と親が話しやすい環境を整えることです。
地域包括支援センターに相談する
厚生労働省は、地域包括支援センターについて、地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行う機関で、市町村が設置していると説明しています。親が介護サービスを使っていなくても、家族の相談を受けつけているセンターが多くあります。
環境省の調査でも、ごみ屋敷の事案が分かるきっかけとして、地域包括支援センターやケアマネジャーからの相談が挙げられています。高齢者の暮らしを見守る立場の人が、散らかった家の状況を把握し、つなぐ役割を担っていることがうかがえます。

相談するときは、親の名前や住所、気になっている様子、家族の連絡先を整理しておくと、話が早く進みます。親の了解を得たうえで相談できれば理想ですが、まず家族だけで状況を伝えて助言をもらうことも可能です。
市区町村のごみ担当で、ごみ出し支援を確かめる
ごみ出しが難しくなったときの手段として、自治体の「高齢者ごみ出し支援」があります。環境省の手引き(令和3年3月)によると、令和3年1月時点で、全国の34.8%にあたる417の地方公共団体で、高齢者のごみ出し支援制度が導入されていました。「ふれあい収集」などの名前で、自治体の職員や委託業者が玄関先からごみを回収したり、地域の団体が手伝ったりする仕組みです。
制度の有無や対象、利用の条件は、市区町村ごとに異なります。親が住む市区町村のごみ担当窓口か、地域包括支援センターに、利用できる支援があるかを聞いてみましょう。
社会福祉協議会や民生委員も、地域の支え手
環境省の報告書には、自治体の対応として、社会福祉協議会や地域包括支援センターによる定期的な見守りと助言、地元の民生委員と協力した対応が紹介されています。地域の人とつながっていると、家族が遠くにいても、様子を知る手がかりが増えます。
小さな場所から片付けて、続く形にする
図は、気づいてから続けるまでの、大まかな流れです。順番どおりに進まなくても構いません。大切なのは、「相談する」と「小さく片付ける」のあいだで止まらず、続ける仕組みまでたどり着くことです。
最初の1日は、運び出さない
最初の日は、部屋ごとの写真を撮り、貴重品と書類をひとつの箱に集めるところまでで十分です。運び出しや処分は、まだ始めません。状況を見渡して、どこから手をつけるかを親と一緒に決める日にします。
通り道と玄関から始める
片付けやすい場所を選ぶ目安は、安全に関わるかどうかです。玄関、廊下、トイレまでの通り道、寝室の周りは、物が置かれていると転倒の心配があります。まず、この通り道を空けることを目標にします。
台所や居間のように、使う頻度の高い場所は、親が普段の暮らしで困っている点を聞きながら進めます。使っている物の置き場所を勝手に変えると、かえって探し物が増えます。
気持ちが追いつかないときは、段階を分ける
物を手放すことに抵抗がある親には、見る日、触る日、決める日、手放す日と、段階を分けて進める方法があります。「今日は見るだけ」と決めておくと、親も安心して付き合えます。
仕分けは3つの箱で
残す物、迷う物、手放す物の3つの箱に分けると、判断が軽くなります。迷う物は保留の箱に入れ、置き場所と見直す日を決めておきます。保留の箱が増え続けないよう、期限を決めることがコツです。

通帳、印鑑、保険証券、契約書などの大切な書類は、仕分けの最中に紛れやすい物です。見つけたら、その場で別の箱に移しておきましょう。
自治体のごみ収集に出せる物は、無理に業者へ回さない
量が多く見えても、自治体のごみ収集に出せる物は多くあります。業者に頼むのは、重い物や大型の家具、量が多くて運べない物に絞ると、費用を抑えやすくなります。家電のうち、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機は、家電リサイクル法の対象です。普通のごみとしては出せません。
散らかるのを防ぐ、続く仕組みを作る
一度きれいにしても、暮らしの困りごとが残っていると、また物がたまります。環境省の報告書にも、堆積物を強制的に撤去しても、原因を解決しなければ再発し、根本的な解決にならないという自治体の考え方が載っています。片付けのあとにこそ、続く仕組みが必要です。
ごみ出しを、楽にする
自治体のごみ出し支援を使う、集積場までの距離が近い日を選ぶ、軽い袋に小分けして出す。こうした工夫で、ごみ出しの負担は下がります。可燃ごみだけでも、家族や近所の人が声をかけて出しやすくする方法があります。
物を増やさない入り口を整える
届く荷物や郵便物、買い物の量が増えると、置き場所がなくなります。郵便物は開封したら、その場で仕分ける箱を決めます。「新しい物を入れるときは、古い物を一つ出す」のように、簡単な約束を親と決めておくと続けやすくなります。
定期的に様子を見る機会を作る
月に一度、電話で近況を聞く。帰省のときに、玄関と台所だけは一緒に見る。遠方に住んでいる場合は、近くに住む親戚や地域包括支援センターにも、気づいたことを共有してもらいます。遠方から進める工夫は、遠方の実家の遺品整理、現地に行かずに進める方法にも整理しています。

きょうだいがいる場合は、窓口になる人を一人に決め、役割を分けておきます。誰かだけが負担を背負うと、続きません。
避けたい進め方
急ぐあまり、家族が先に業者を決めてしまう、本人に黙って捨てる、といった進め方は避けます。業者に頼む場合は、見積もりを複数社から取り、内容を書面で確かめます。流れは生前整理を業者に頼むときの流れで整理しています。
突然訪ねてきた業者に、その場で作業を頼まないことも大切です。国民生活センターは、訪問購入のトラブルについて、突然訪問してきた業者は家に入れない、といった対応を示しています(2023年9月27日公表)。親が一人で暮らしている場合は、「知らない人が来たら、その場で決めずに電話してね」とあらかじめ伝えておくと安心です。
高齢の親の家が片付かないときの、よくある質問
親が「放っておいて」と言うときは
親が片付けの話を嫌がります。どうすればよいですか。
無理に進めず、いったん話題を変えて構いません。片付けではなく、体調や食事、ごみ出しの様子など、暮らしの話から入ってみましょう。親が話してくれるようになるまで、時間がかかることもあります。その間は、地域包括支援センターに相談して、第三者の関わりを探す方法もあります。
遠方で頻繁に行けないときは
遠くに住んでいて、月に一度も帰れません。
電話やビデオ通話で、玄関や廊下の様子を見せてもらう方法があります。近くの親戚や、地域包括支援センター、ケアマネジャーに、気づいたことを教えてもらえるよう頼んでおくのも一つです。
業者に頼むと、いくらぐらいかかりますか
家じゅうを一度に片付けてもらうと、費用はどのくらいですか。
間取りと物の量によって大きく変わります。費用の目安は、ゴミ屋敷清掃の費用相場で整理しています。見積もりは複数社から取り、内訳を比べてください。
本人が片付けの必要を感じていないときは
本人は困っていないと言いますが、家族から見ると危ない状態です。
本人の感じ方と、家族から見た心配は、ずれることがあります。安全に関わる一点に絞って伝えるほか、地域包括支援センターに状況を相談して、本人との関わり方の助言を受けるとよいでしょう。
見積もりを取って、頼む範囲の見通しを立てる
自分たちで進める部分と、業者に頼む部分を分けたいときは、物の量と費用の見通しを知っておくと話が具体的になります。かたづけ比較では、片付けの見積もりを無料で比べられます。
この記事の出典
- 環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課「令和6年度『ごみ屋敷』に関する調査報告書」(環境省ウェブサイト・令和7年3月・2026年10月16日確認)
- 環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課「高齢者のごみ出し支援制度導入の手引き」(環境省ウェブサイト・令和3年3月・2026年10月16日確認)
- 厚生労働省「地域包括支援センター」(厚生労働省ウェブサイト・2026年10月16日確認)
- 消費者庁「10月10日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!」(消費者庁ウェブサイト・2020年10月8日公表・2026年10月16日確認)
- 国民生活センター「不用なお皿の買い取りのはずが、大切な貴金属も強引に買い取られた!-訪問購入のトラブルが増えています-」(国民生活センター・2023年9月27日公表・2026年10月16日確認)
- 環境省「家電リサイクル法の概要」(環境省ウェブサイト・2026年10月16日確認)
健康や介護、契約、財産に関わる判断が必要な場合は、地域包括支援センターや消費生活センターのほか、医師・弁護士・司法書士など、その分野の専門家や窓口にご相談ください。

