遺品整理のあとの実家、空き家のままにしないための選択肢

手続き 2026/11/3 公開

この記事の結論

  • 2023年の空き家は900万2千戸で過去最多です。国土交通省は、空き家の発生原因の半分以上が相続によるものだと説明しています。
  • 実家の選択肢は、住む、貸す、売る、手放す、管理しながら考える、の5つです。どれを選ぶにも、登記の名義を確かめることが出発点になります。
  • 家族の意見がまとまらないときは、結論より先に「誰が、いつまでに決めるか」を決め、その間は換気と庭木の手入れを続けます。

遺品整理が終わったあと、次に悩まれることが多いのは「この家をどうするか」です。片付けが済んで物がなくなった実家は、誰も住まないまま時間だけが過ぎていきます。国土交通省は、空き家の発生原因の半分以上が相続によるものだと説明しています。親が住まなくなった家の方針を決めないまま子どもが相続し、そのまま空き家になる例は珍しくありません。ただ、選択肢は「売る」か「壊す」かの二択ではありません。本記事では、実家を空き家のままにしないための選択肢を、住む、貸す、売る、手放す、管理しながら考える、の5つに整理し、決めるまでの順番と、知っておきたい制度をお伝えします。

相談者の問い

片付けは終わりましたが、家をどうするか家族で決めかねています。

かたづけ比較の答え

すぐに結論を出さなくて構いません。まず登記の名義を確かめ、家族で「誰が、いつまでに決めるか」だけを決めましょう。その間は、換気と庭木の手入れを続けておけば、家は急には傷みません。

空き家は、どのくらい増えているのか

実家が空き家になる家は、それほど多いのですか。

日本の空き家の数。2023年の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%、賃貸・売却用などを除く空き家は385万6千戸

総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、2023年10月1日現在の空き家は900万2千戸で、2018年の848万9千戸から51万3千戸増え、過去最多となりました。総住宅数に占める空き家の割合は13.8%で、こちらも過去最高です。

使う予定のない空き家が増えている

空き家のうち、賃貸用や売却用、別荘などを除いた「使用目的のない空き家」は385万6千戸で、2018年から36万9千戸増えました。国土交通省の資料では、この種の空き家は20年間でおよそ2倍に増えたと説明されています。2003年の212万戸が、2023年には386万戸になりました。

原因の半分以上は相続

国土交通省は、空き家の発生原因の半分以上が相続によるものだとしています。解体費用をかけたくない、家財や荷物を片付けられない、将来自分や親族が使うかもしれない、という理由で、そのまま置かれることが多いと説明されています。遺品整理が終わった時点は、この「置いたまま」になるかどうかの分かれ目です。

遺品整理と相続手続きは、別々に進む。遺品整理は物を扱い、相続手続きは権利と義務を扱う

放置すると、どうなるのか

空き家のまま置いておくと、何が起きますか。

空き家を放置したときの3つのリスク。状態が悪くなる、ご近所への悪影響、手間もお金もかかる

国土交通省の空き家対策の特設サイトは、放置のリスクを3つに分けて説明しています。図の3つです。

家が傷み、資産価値が下がる

人が住まない家は、梅雨や夏に換気されず、カビて傷みやすくなり、破損や倒壊のおそれが強まるとされています。資産価値が下がれば、売ることも貸すことも難しくなります。

ご近所に迷惑がかかる

庭木のはみ出し、悪臭の発生、害虫やネズミ、不審者の侵入は、どれもご近所トラブルにつながります。遠方に住んでいると、こうした変化に気づくのが遅れます。

手間とお金がかかり続ける

住んでいなくても、固定資産税と修繕費はかかります。処分する場合は解体費もかさみます。庭木の手入れと換気は定期的に必要で、遠方からだと交通費と時間もかかります。

静かな日本家屋の前で、鍵を手に玄関を見ている場面のイラスト

法律の上でも、管理が求められる

2023年12月13日に施行された改正空家等対策の推進に関する特別措置法では、放置すれば特定空家になるおそれのある空き家を「管理不全空家」として、市区町村長が指導・勧告できるようになりました。勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の住宅用地特例の対象から外れます。 窓が割れたまま、庭木が伸び放題、という状態が続くと、この対象になる可能性があります。

実家をどうするか、5つの選択肢

遺品整理のあとの実家の5つの選択肢。住む、貸す、売る、手放す、管理しながら考える

選択肢を5つに分けて並べます。どれが正解ということはなく、家の状態、場所、家族の事情で変わります。

選択肢向いている場合先に確かめること
住む家族の誰かが移る予定がある修繕の範囲と費用
貸す立地がよく、修繕すれば使える借り手の見込みと管理の手間
売る使う予定がなく、買い手が見込める名義と境界、建物の状態
手放す買い手がつかず、維持が負担解体の費用、制度の条件
管理しながら考える家族の意見がまとまらない誰が、いつまでに決めるか

住む・貸す

家族の誰かが住むなら、水回りと屋根の修繕を先に見積もります。貸す場合は、修繕費と家賃の見込みを並べて、何年で回収できるかを計算します。遠方なら、管理を任せる不動産会社の手数料も含めて考えます。

貸す場合に見落としやすいのは、借り手が決まるまでの空き期間と、退去のたびに必要になる修繕です。家賃の見込みだけで判断せず、空き期間と修繕を含めた収支で考えます。また、自分の家族が将来住む可能性があるなら、定期借家のように期間を区切る契約を不動産会社に相談する方法もあります。

売る

買い手が見込める場所なら、売却がいちばん負担の少ない選択肢になることが多いです。ただし、登記の名義が亡くなった方のままでは売れません。相続登記を済ませ、境界が明らかかどうかも確かめておきます。不動産会社に、家をそのまま売る場合と更地にして売る場合の両方を聞いてみましょう。

査定は1社だけで決めず、2〜3社に頼んで金額と根拠を並べます。金額の高い会社が、売れる会社とは限りません。「いくらで売れそうか」と「いくらで売り出すか」は別の数字なので、両方を聞いておくと、あとで話が食い違いにくくなります。

座卓で家族が書類を囲み、落ち着いて相談している場面のイラスト

手放す・管理しながら考える

買い手がつかず、維持が負担になる場合は、解体して土地だけにする、制度を使って国に引き取ってもらう、という選択肢があります。すぐに決められないときは、管理しながら考える期間を置きます。その場合も、「誰が、いつまでに決めるか」だけは決めておきます。

一般の買い手が見つからない土地でも、隣の土地の所有者にとっては、敷地を広げられる価値があることがあります。不動産会社に、隣地の所有者へ声をかけてもらえるかを相談してみるのも一つの方法です。市区町村によっては、空き家を探している人と持ち主をつなぐ仕組みを設けているところもあるので、空き家の相談窓口で聞いてみましょう。

決めるまでの順番

実家の方針を決めるまでの5つの段。登記を確かめる、家族で話し合う、家の状態を見る、相談先に聞く、方針を1つ決める

国土交通省は、空き家で困らないために、家族で話し合い、登記を確認し、家財の整理を進め、必要に応じて自治体や専門家へ相談するよう案内しています。図は、その順に並べたものです。

1. 登記の名義を確かめる

最初に、法務局で登記事項証明書を取り、家と土地の名義を確かめます。固定資産税の納税通知書に載っている土地と建物の一覧も、あわせて手元に置いておきます。親の名義になっていると思っていたら、祖父母の名義のままだった、ということもあります。名義が古いほど、相続人の確認に時間がかかります。

相続人の確認は、戸籍をたどる。出生までさかのぼる、転籍・婚姻ごとに集める、死亡の記載まで揃える

2. 家族で「決める人と期限」を決める

話し合いの前に、登記の名義、固定資産税の通知書の金額、家の写真を1枚の紙にまとめておくと、離れて住む家族とも同じ材料で話せます。兄弟姉妹で意見が分かれるのは、普通のことです。最初から結論を出そうとせず、窓口になる人と、方針を決める期限だけを決めます。期限は、1年以内など、固定資産税の通知が来る前の時期を目安にすると区切りやすくなります。

始める前に家族で決める3つ。誰が進めるか、いつ集まるか、形見をどう決めるか

3. 家の状態を見て、相談先に聞く

屋根、外壁、水回り、シロアリの有無を見ます。自分で判断できない部分は、市区町村の空き家の相談窓口や、不動産会社に見てもらいます。国土交通省の特設サイトも、空き家のある市区町村の窓口や不動産事業者などの専門家に相談するよう案内しています。片付けの段階から方針を考えるときは、遺品整理と相続手続きの順番が参考になります。

4. 材料がそろったら、方針を1つ決める

査定の金額、修繕の見積もり、解体の見積もり、登記の状況がそろった時点で、家族で集まって方針を1つに決めます。全員が集まれないときは、ビデオ通話でも構いません。決めたことは紙に残し、全員に同じ物を渡しておきます。決めたあとで気持ちが変わることもあるので、「◯月までは見直せる」と見直しの期限も一緒に置いておくと、進めやすくなります。

知っておきたい2つの制度

相続登記の申請義務化。令和6年4月1日から施行、3年以内に申請する義務、10万円以下の過料の適用対象、施行日より前に相続した不動産も対象

実家の方針を決めるときに関わる制度を、2つ紹介します。どちらも法務省が案内しているものです。

相続登記の申請義務化

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務になりました。法務省の案内によると、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしない場合で、正当な理由がないときは、10万円以下の過料の対象になります。施行日より前に相続した不動産も対象で、その場合は2027年3月31日までに申請します。家をどうするかを決める前でも、登記は先に進めておけます。

相続土地国庫帰属制度

2023年4月27日に始まった制度で、相続や遺贈で取得した土地の所有権を、法務大臣の承認を受けて国に帰属させることができます。申請できるのは相続等で土地を取得した方で、制度開始より前に相続した土地も対象です。

相続土地国庫帰属制度の要点。建物がある土地は申請できない、審査手数料は土地一筆につき14,000円、承認後は10年分の管理費用を考慮した負担金を納める

ただし、条件があります。建物がある土地は申請できないため、家を解体して更地にしてからの申請になります。審査手数料は土地一筆につき14,000円で、承認を受けたあとは、10年分の標準的な管理費用を考慮して算定した負担金を納めます。崖がある土地や、境界が明らかでない土地なども対象外です。申請先は土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局で、相談は全国の法務局で受け付けています。

解体するかどうかは、税金とあわせて考える

建物を解体すると、管理の手間は減りますが、土地の固定資産税の扱いが変わることがあります。住宅が建っている土地には住宅用地特例があり、解体するとその対象から外れるためです。一方で、先に説明したとおり、管理不全空家として勧告を受けた場合も特例は外れます。解体するか残すかは、解体費と、その後の税金と、管理の手間を並べて決めます。 具体的な税額は土地によって違うので、市区町村の資産税の窓口で、解体した場合と残した場合の両方を聞いてみましょう。

制度を使うかどうかは、費用を並べて決める

解体費、手数料、負担金を合わせた金額と、売却や貸し出しで見込める金額を並べて比べます。金額は土地と建物の条件で大きく変わるため、法務局と不動産会社の両方に聞いてから決めましょう。

区役所の窓口で、職員に落ち着いた様子で相談している場面のイラスト

決まるまでの間に、しておくこと

管理しながら考える期間にすること。月1回の換気、庭木の手入れ、郵便物の確認、火災保険の確認、近所への連絡先の共有

方針が決まるまでの間、家が傷まないようにする手入れを続けます。図の5つを、担当を決めて回します。

片付けを先に済ませておく

方針がどれになっても、家の中の物を片付けておくことは共通して必要です。住むにも貸すにも売るにも、物が残ったままでは次に進めません。遠方で片付けに通えないときは、遠方の実家の遺品整理で説明したように、業者に現地を見てもらい、写真で確かめながら進める方法があります。

月に1回は、風を通す

国土交通省の資料は、庭木の手入れや換気を定期的に行うよう案内しています。月に1回は窓を開けて風を通し、水道の水を流します。遠方なら、近くに住む親族や、市区町村が紹介する管理サービスに頼む方法もあります。

郵便物と火災保険を確かめる

郵便受けに郵便物がたまると、空き家だと分かりやすくなります。転送の手続きをし、ときどき回収します。火災保険は、住んでいない家では契約内容が変わることがあるので、保険会社に空き家になったことを伝えて確かめておきましょう。

電気、ガス、水道は、止めるかどうかを決めます。換気や掃除に通うなら、水道と電気は残しておいたほうが使いやすく、ガスは止めても困りません。残す契約は、名義と支払い口座を相続人のものに変えておきます。

実家の居間で、きょうだいが並んで進め方を相談している場面のイラスト

近所に連絡先を伝えておく

隣近所に、家が空いていることと、何かあったときの連絡先を伝えておきます。庭木のはみ出しや、見慣れない人の出入りに気づいたときに、連絡をもらえます。あわせて、自治会や町内会の会費、回覧板の扱いも確かめておくと、地域とのやりとりが途切れずに済みます。片付けの途中で見つかった書類は、遺品整理で出てきた写真や手紙の記事で説明したように、方針が決まるまで保留の箱に入れておいて構いません。

先に探しておきたい書類。通帳・郵便物、保険証券、不動産の権利証・納税通知書、年金の書類、借入の契約書

まとめ:決める期限を、先に決める

実家の選択肢は、住む、貸す、売る、手放す、管理しながら考える、の5つです。どれを選ぶにも、登記の名義を確かめることが出発点になります。相続登記は2024年4月から義務になり、3年の期限があります。方針を決める前でも、登記は進めておけます。

選択肢ごとに、確かめる相手も変わります。住む・貸すなら工務店と不動産会社、売るなら不動産会社と法務局、手放すなら法務局と市区町村の窓口です。家族の意見がまとまらないときは、結論を急がず、「誰が、いつまでに決めるか」だけを決めます。その間は、換気と庭木の手入れを続け、近所に連絡先を伝えておけば、家は急には傷みません。空き家のまま年月が過ぎることを避けるために、期限を先に決めることが、いちばんの備えです。

相談者の問い

兄弟で意見が分かれ、売るか残すか決まりません。

かたづけ比較の答え

意見が分かれているうちは、どちらにも決めなくて構いません。まず「1年後の◯月までに決める」と期限を置き、その間に不動産会社の査定と修繕の見積もりを取って、同じ材料を全員で見られるようにしましょう。

急ぐ理由になるもの、ならないもの。急ぐ理由になるのは明け渡しの期日や売却の予定や相続手続きの期限、ならないのは周りの早くの声やなんとなくの焦り

相談者の問い

家の中に物が残ったままでも、売れますか。

かたづけ比較の答え

物が残ったままでは、査定も内見も進みにくくなります。残す物を分けたうえで、残りを片付けてから売りに出すのが一般的です。

相談者の問い

遠方に住んでいて、月に1回も通えません。

かたづけ比較の答え

近くに住む親族に頼む、市区町村の空き家の相談窓口で管理サービスを紹介してもらう、などの方法があります。通える頻度に合わせて、管理を人に頼むか、方針を早めに決めるかを家族で話し合いましょう。

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この記事の出典

  • 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果の概要」(総務省統計局・2026年10月27日確認)
  • 国土交通省「空き家対策特設サイト『空き家の問題とは? 法改正について』」(国土交通省・2026年10月27日確認)
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)概要」(国土交通省・2023年12月13日施行・2026年10月27日確認)
  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(法務省・2026年10月27日確認)
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(法務省・2023年4月24日掲載・2026年10月27日確認)

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