位牌を引き継ぐ人がいないときの選択肢、閉眼供養とは

供養 2026/11/5 公開

この記事の結論

  • 位牌は手元に置き続けなければならない物ではなく、まとめて小さくする、寺院に預ける、閉眼供養をして手放す、といった選択肢があります。
  • 扱い方は宗派で違います。浄土真宗本願寺派は位牌を用いないと案内しており、閉眼供養にあたる法要の考え方や呼び方も宗派と寺院によって異なります。
  • まず家の宗派を確かめ、菩提寺か同じ宗派の寺院に相談します。手放す場合も、位牌の表と裏を写真に残しておきます。

実家の遺品整理を進めていると、仏壇の中の位牌をどうするかで手が止まることがあります。「自分の家には仏壇を置く場所がない」「兄弟もみな遠方で、引き継ぐ人がいない」という事情は、今では珍しいことではありません。位牌は、手元に置き続けなければならない物ではありません。寺院に預ける、まとめて小さくする、閉眼供養をしてから手放す、といった選択肢があります。ただ、位牌の扱いは宗派によって考え方が違い、浄土真宗のように位牌を用いない宗派もあります。本記事では、位牌を引き継ぐ人がいないときの選択肢を整理し、閉眼供養とはどういうものか、誰に何を相談すればよいかを、順にお伝えします。

相談者の問い

位牌を引き継げる人がいません。手放してもよいのでしょうか。

かたづけ比較の答え

手放してはいけない、という決まりはありません。ただ、扱い方は宗派や寺院によって考え方が違います。まず菩提寺か、同じ宗派の寺院に相談してから決めましょう。

位牌とは、どういうものか

そもそも、位牌はどういう意味を持つ物なのですか。

位牌を引き継ぐ人がいないときの4つの選択肢。手元に残す、まとめて小さくする、寺院に預ける、閉眼供養をして手放す

図は、この記事で説明する4つの選択肢です。先に、位牌そのものの意味を整理しておきます。

亡くなった方の名前を記した札

位牌は、亡くなった方の戒名(宗派によっては法名・法号)、俗名、亡くなった年月日などを記した木の札です。仏壇の中にまつり、日々手を合わせる対象として扱われてきました。曹洞宗の案内では、位牌は本尊の左右にまつり、古い位牌を向かって右に、新しい位牌を左に置くとされています。

宗派によって、扱いが違う

浄土真宗本願寺派は、位牌を用いないと案内しています。位牌はもとは中国の儒家で用いられていた物で、「霊の宿る所」という意識が根底に残っているため、という説明です。浄土真宗では、代わりに過去帳に亡くなった方の法名や俗名、亡くなった年月日を記します。同じ「位牌をどうするか」という悩みでも、宗派によって出発点が違います。

呼び方は、宗派によって違う。一般に言われる呼び方は魂抜き・お性根抜き、浄土真宗本願寺派は入仏法要と言う

まず、家の宗派を確かめる

宗派によって、相談先も、閉眼供養にあたる法要の考え方も変わります。実家の宗派が分からないときは、親族に聞くのがいちばん確実です。仏壇の中の書き付け、位牌の裏、過去帳、法要の案内はがきの差出人も手がかりになります。宗派が分かれば、相談する寺院も決まります。

菩提寺と宗派の手がかり。親族に聞く、仏壇の中の書き付け、位牌の裏、過去帳、法要の案内はがき

引き継ぐ人がいないとき、何が起きるのか

遺品を前に、家族が静かに手を合わせている場面のイラスト

位牌の扱いに困るのは、多くの場合、仏壇ごと実家を片付けるときです。

仏壇と位牌は、別々に考える

仏壇は、素材で見れば木の家具です。一方で位牌は、亡くなった方の名前が記された物で、扱いの重さが違います。仏壇と位牌、本尊、仏具をひとまとめにせず、分けてからひとつずつ決めると、判断しやすくなります。

ひとまとめにせず、4つに分ける。仏壇、本尊、位牌、仏具

置く場所がないことが、いちばん多い悩み

引き継ぐ人がいないと言っても、多くの場合、気持ちの上で引き継ぎたくないわけではありません。今の住まいに仏壇を置く場所がない、転勤が多い、という暮らしの事情によるものです。その場合は、位牌を小さくする、数をまとめる、という方法で、置き場所の問題を解決できることがあります。

位牌が何柱もある

代々の家では、位牌が何柱も並んでいることがあります。曹洞宗の案内は、位牌が多くなって仏壇が狭くなった場合は、「繰り出し位牌」や「合同牌」にしたり、「○○家先祖代々」にまとめたりできるとし、菩提寺に相談するよう勧めています。引き継ぐ人がいる場合も、この方法で数を減らせば、小さな住まいにも置きやすくなります。

仏壇の引き出しを開けて、古い写真や書類を取り出している場面のイラスト

菩提寺との関係

実家が菩提寺の檀家になっている場合、位牌を手放すことは、寺院との関係をどうするかという話にもつながります。墓がその寺院にあるなら、墓の扱いもあわせて考えることになります。急いで結論を出さず、まず寺院に事情を伝えて相談します。

位牌、仏壇、墓の3つは、同じ時期に決める必要はありません。位牌の扱いを先に決め、墓のことは家族で時間をかけて考える、という分け方もできます。墓を移したり閉じたりする場合は、寺院だけでなく市区町村の手続きが関わることがあるので、寺院と市区町村の窓口の両方に聞いておきましょう。

選択肢1:手元に残す・まとめて小さくする

全部を手放さない、という選び方。写真に残してから手放す、仏具を1つだけ残す、小さな仏壇に替える

置く場所さえあれば、位牌だけを引き取る方法があります。仏壇ごと引き継がなくても、位牌は残せます。

位牌だけを引き取る

仏壇を手放し、位牌だけを今の住まいに移す方もいます。棚の上に小さな台を置き、位牌と花立て、香炉を並べるだけでも、手を合わせる場所はつくれます。小さな仏壇に買い替える方法もあります。

運ぶときは、柔らかい布で包み、倒れないように箱に入れて手で持ち運びます。宅配便で送るより、家族が自分で運ぶほうが安心です。新しい住まいに移したあと、改めて法要をするかどうかは、宗派と寺院の考え方によって違うので、移す前に寺院に聞いておきましょう。

繰り出し位牌や、先祖代々の位牌にまとめる

何柱もある位牌は、まとめて1つにする方法があります。繰り出し位牌は、箱型の中に戒名を記した札を何枚も重ねて入れる形です。「○○家先祖代々」の位牌に1つにまとめる方法もあります。1つにするときは、もとの位牌をどう扱うかも含めて、菩提寺に相談します。

座卓で家族が書類を囲み、落ち着いて相談している場面のイラスト

写真や過去帳に記録を残す

手放す場合でも、位牌に記された戒名、俗名、亡くなった年月日を、写真や紙に記録しておきます。家の記録として、あとから法要の日程を確かめるときにも役立ちます。過去帳があれば、判断をいったん保留にして、まず保管しておきましょう。

写真は、位牌の表と裏を1枚ずつ撮ります。裏には亡くなった年月日や俗名、寺院の名前が書かれていることが多く、表だけでは記録が足りません。撮った写真は、家族全員が見られる場所に保存しておきます。

選択肢2:寺院に預ける

寺院に預けると、どうなるのですか。

位牌を寺院に預けるときに聞くこと。預かってもらえる期間、納める金額、法要の有無、期間が過ぎたあとの扱い

引き継ぐ人がいない場合に、寺院に位牌を預け、供養を続けてもらう方法があります。寺院によって呼び方や仕組みが違い、受け付けていない寺院もあります。

期間と金額は、寺院ごとに違う

預かってもらえる期間、納める金額、年忌の法要をしてもらえるか、期間が過ぎたあとにどう扱われるかは、寺院によって異なります。図の4つを、直接聞いて確かめます。金額だけで比べず、続けてお参りに行ける距離かどうかも考えます。

電話で聞くときの言い方

寺院に初めて連絡するときは、何を伝えればよいか迷うものです。「実家の仏壇と位牌を、引き継ぐ者がいなくなりました。宗派は◯◯です。位牌を預かっていただけるか、閉眼の法要をお願いできるかを相談したいのですが」と、事情と宗派と相談したいことの3つを最初に伝えると、話が早く進みます。位牌の数と、仏壇のある場所もあわせて伝えましょう。

菩提寺がない場合

菩提寺がない、あるいは遠くて通えない場合は、同じ宗派の近くの寺院に相談できます。檀家でなくても、相談には応じてもらえることが多いです。仏壇を買った仏具店に聞くと、近くの寺院を紹介してもらえることもあります。

菩提寺がなくても、相談先はある。同じ宗派の近くの寺院、仏壇を買った仏具店、近所の仏具店、自治体の窓口

選択肢3:閉眼供養をしてから手放す

閉眼供養とは、どういうものですか。

開眼供養と閉眼供養の違い。開眼供養は新しく迎えるときの儀式、閉眼供養は手放す前の儀式。どちらも呼び方と作法は宗派で違う

手放す前に、閉眼供養を行う方が多くいます。

開眼供養と対になる儀式

日蓮宗の解説によると、仏像や仏画を新しく作ったときに行う儀式を開眼供養と呼び、俗に「魂入れ」とも呼びます。閉眼供養は、これと対になるもので、位牌や仏壇を手放す前に僧侶に読経してもらう儀式として、一般に「魂抜き」「お性根抜き」とも呼ばれています。

呼び方と作法は、宗派で違う

先に説明したとおり、浄土真宗本願寺派は、僧侶が魂を入れるのではないと説明し、新しい仏壇を迎える法要を「入仏法要」と呼ぶよう案内しています。閉眼供養にあたる法要をするか、どう呼ぶかも、宗派と寺院によって異なります。呼び方や作法を自己判断で決めず、寺院に聞いてから進めましょう。

自宅に来てもらうか、寺院に持っていくか

この法要は、僧侶に自宅へ来てもらって仏壇の前で行う場合と、位牌を寺院に持参して行う場合があります。仏壇も一緒に手放すなら自宅で、位牌だけなら寺院で、という分け方が多いですが、寺院の考え方と日程によって変わります。当日に用意する物も寺院に聞いておきます。家族が立ち会えるよう、日程は早めに相談しましょう。

閉眼供養のあとの手放し方

処分と供養は別の話。処分は物をどう手放すか、供養は気持ちの区切り

供養を済ませたあと、位牌を寺院でお焚き上げしてもらえることがあります。仏具店や、遺品整理業者が供養とあわせて引き取りを手配する場合もあります。自治体のごみとして出すこともできますが、その場合も白い紙で包むなど、家族が納得できる形を選びます。仏壇の手放し方は、仏壇と位牌の処分で詳しく整理しています。

決めるまでの順番

位牌を手放すまでの5つの段。宗派を確かめる、家族に聞く、寺院に相談する、記録を残す、閉眼供養と引き取りを決める

図は、位牌の扱いを決めるまでの順番です。上から順に進めます。

1. 宗派と菩提寺を確かめる

最初に、家の宗派と菩提寺を確かめます。親族に聞き、仏壇の中や位牌の裏、過去帳を見ます。浄土真宗であれば、位牌ではなく過去帳や法名軸がまつられていることもあります。

2. 家族と親族に聞く

手放す前に、位牌を引き取りたい人がいないかを家族と親族に聞きます。とくに本家と分家の関係がある家では、本家の位牌を分家が引き継ぐ話になることもあるので、親族の年長者にも声をかけておきます。自分は引き継げなくても、いとこや親戚が引き継ぎたいと考えていることがあります。写真を送り、返事の期限を区切って聞きましょう。

始める前に家族で決める3つ。誰が進めるか、いつ集まるか、形見をどう決めるか

親族で意見が分かれたとき

「先祖の位牌を手放すのは申し訳ない」と考える親族がいることもあります。その場合は、手放すのではなく寺院に預ける、先祖代々の位牌にまとめて1つだけ残す、という中間の選択肢を示すと、話がまとまりやすくなります。寺院に同席してもらい、説明を一緒に聞くのも一つの方法です。

3. 寺院に相談し、日程を決める

扱い方が決まったら、寺院に相談して閉眼供養や預け入れの日程を決めます。法要は寺院の都合もあるので、片付けの作業日から逆算して早めに連絡します。作業の日までに閉眼供養を済ませておくと、当日に迷わずに済みます。

親が元気なうちに、できること

生前整理でしておくと、遺品整理が軽くなる3つ。書類のありかを決めておく、財産の一覧を1枚つくる、残したい物と手放したい物を伝える

位牌の扱いに困る場面は、親が元気なうちに話しておくと、ずいぶん減ります。

宗派と菩提寺を聞いておく

家の宗派、菩提寺の名前と連絡先、墓の場所は、親に聞けばすぐ分かることが多いものです。いざというときに分からず、仏壇の中を探し回ることにならないよう、紙に書いておいてもらいましょう。

位牌をどうしてほしいかを聞く

親自身が、位牌や仏壇をどうしてほしいと考えているかを聞いておきます。「寺に預けてほしい」「先祖代々の位牌にまとめてよい」と聞いておけば、子どもの側で迷わずに済みます。切り出し方に迷うときは、親に生前整理を勧めたいときの伝え方が参考になります。

片付けの作業との合わせ方

手放すまでの6つの手順。菩提寺があるか確かめる、宗派を確かめる、家族に相談する、中身を出してから動かす、法要をするかを決める、手放し方を選ぶ

位牌と仏壇の扱いは、遺品整理の作業日と重なることが多いため、順番を合わせておきます。

仏壇の中身を、先に出す

仏壇の引き出しや台の下から、通帳、写真、手紙、権利証が出てくることがあります。仏壇を動かす前に、中身をすべて出して確かめます。位牌と過去帳は、別の箱に入れて保管しておきます。

本尊や掛軸、りんや香炉などの仏具も、位牌と同じ日に扱いを決める必要はありません。位牌と本尊は寺院に相談し、仏具は素材ごとに自治体の区分で出すか、使っていた物を1つだけ残す、というように分けて考えると、作業日に迷わずに済みます。

業者に頼むときは、扱いを伝える

遺品整理業者に頼む場合は、位牌と仏壇をどう扱うかを、見積もりの段階で伝えます。閉眼供養を済ませたかどうか、供養の手配を頼むかどうかで、作業の内容と費用が変わります。業者を選ぶときは、供養と処分と買い取りをどう分けて扱うかを説明できるかを見ます。選び方は、遺品整理業者の選び方でも整理しています。

見積もりの前に、この5つを確かめる。一般廃棄物の許可、見積書の内訳、相見積もりの可否、遺品の扱い方、破損したときの補償

法要のお礼は、寺院に聞いてよい

法要や預け入れには、寺院へのお礼(お布施)を納めます。金額の考え方は寺院によって違い、「お気持ちで」と言われることもあります。迷うときは、「皆さまはどのくらい納めていらっしゃいますか」と尋ねて構いません。親族に、以前の法要でいくら納めたかを聞くのも参考になります。

期限がないなら、急がない

遺品整理そのものに、法律で決まった期限はありません。賃貸の明け渡しや家の売却など、期限がある場合だけ、そこから逆算して進めます。期限がないなら、位牌は保管しておき、四十九日や一周忌などの区切りに合わせて寺院と相談する方法もあります。

まとめ:寺院に相談してから決める

位牌を引き継ぐ人がいないときの選択肢は、手元に残す・まとめて小さくする、寺院に預ける、閉眼供養をして手放す、の3つに分かれます。どれを選ぶにも、家の宗派を確かめ、菩提寺か同じ宗派の寺院に相談することが出発点です。浄土真宗のように位牌を用いない宗派もあり、閉眼供養の呼び方や作法も宗派で違います。

居間の木の棚に、小さな写真立てと手のひらに収まる容器、一輪の花が並べて置かれている場面のイラスト

手放す場合も、戒名や俗名、亡くなった年月日を写真や紙に残しておけば、家の記録は途切れません。親が元気なうちに、宗派と菩提寺、位牌の扱いの希望を聞いておくと、いざというときに迷う場面が減ります。家族と親族に聞き、寺院と日程を合わせてから、片付けの作業に入りましょう。

相談者の問い

菩提寺とは長く付き合いがなく、相談しにくいです。

かたづけ比較の答え

付き合いが途切れていても、事情を伝えれば相談に応じてもらえることが多いです。どうしても難しい場合は、同じ宗派の近くの寺院や、仏壇を買った仏具店に相談してみましょう。

仏壇のまわりにある3つ。過去帳、遺影、位牌。仏壇とは別に、ひとつずつ決める

相談者の問い

閉眼供養をしないで手放すと、問題がありますか。

かたづけ比較の答え

法律で決められたものではないので、閉眼供養をしなくても手放すことはできます。ただ、宗派や家族の気持ちによって考え方が違うため、親族と寺院に相談してから決めると、あとで気持ちのしこりが残りにくくなります。

相談者の問い

浄土真宗の家ですが、仏壇に位牌がありました。どうすればよいですか。

かたづけ比較の答え

地域や家の習慣で、位牌がまつられていることもあります。扱い方は、菩提寺か浄土真宗の近くの寺院に相談しましょう。過去帳に記録を移す方法などを案内してもらえることがあります。

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この記事の出典

  • 曹洞宗「お仏壇のまつり方」(曹洞宗・2026年10月27日確認)
  • 浄土真宗本願寺派「仏事・行事Q&A」(浄土真宗本願寺派・2026年10月27日確認)
  • 日蓮宗「じつは身近な仏教用語 開眼」(日蓮宗・2026年10月27日確認)
  • 環境省「家庭の廃棄物の収集運搬と無許可業者について」(環境省・2026年10月27日確認)

供養の作法や考え方は、宗派・地域・寺院によって異なります。本記事は一般的な進め方を整理したもので、特定の作法を勧めるものではありません。個別の判断は、菩提寺またはその宗派の寺院にご相談ください。

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